カンナ達と別れた大神・七瀬・エリカ・アイリスが、上野公園最深部…『桜樹』に辿り着いたところへ、物語は少し遡る。
『…ククク……来タカ…。』
暗闇の中、不気味に輝く桜の樹は、目の前に立ち尽くす大神達の頭に語り掛けた。
大神「桜樹!!…さくらくんは何処だっ!?」
『フッ…物覚エノ悪イ…。ワタシの《中》ダト言ッタダロウ??』
エリカ「《中にいる》ってわかったって、どうやって中に入るかがわからないと意味無いじゃないですかっ!!アホちん!!」
『アッ…アホチン!?』
アイリス「そーだそーだ!!動けないくせにっ!!」
『動ケナイダト?…フハハッ!馬鹿ヲ言ウナ!《動ケナイ》ノデハナイ、《動ク必要ガナイ》ノダ!!』
エリカ「結局動けないじゃないですかっ!!」
『ウッ…キッ、貴様ハ黙ッテイロ!!……ソノ気ニナレバ、今スグニデモコノ真宮寺サクラヲ殺ス事ガデキルノダゾ??』
大神「くっ……卑怯者め…!!」
すると、それまで黙っていた七瀬がそっと口を開く。
七瀬「……。…どうして……どうしてなのっ!?どうしてあんなに優しかった……貴方が……」
『………』
七瀬「…私は……貴方を信じてる…。もうこんな事やめて……お願い……」
七瀬は震える指で、優しくそっと桜樹に触れた。
『…ッ!!ワタシニサワルナッ!!!!』
---っ!?!?
七瀬「…っ!?」
大神「七瀬くんっ!!!!!」
エリカ「あ…あっ……あぁ……!!」
アイリス「…いや……いやぁーーーーー!!!!!」
桜樹から直視できぬ程の輝きが放たれた直後、皆は自分の眼を疑った。光がそっと触れていた七瀬の右腕を切断し、肩口から大量の血液が流れ出ていたのだ。
七瀬「……っ!?きゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
大神「七瀬くんっ!!エリカくん、アイリス、すぐに治療を!!右腕の結合…できるかい!?」
エリカ「できなくてもやります!!……神よ…奇跡の光を…今ここに!!エヴァンジル!!!!」
アイリス「…ア…アイリス達が…絶対に…絶対に治してあげるから!…お願い……助けてジャンポール!!イリス・プロディジュー・ジャンポール!!!」
純白の光が七瀬の身体を包み込む。
大神「………貴様ぁーーー!!!!!」
大神が霊剣荒鷹を構え、一直線に桜樹へ向かい走り出す。
『オット待テ!…ワタシヲ切ルトイウ事ハ、真宮寺サクラヲモ切ル事ヲ意味スルトイウコトヲ忘レルナヨ…?』
大神の動きがピタッと止まる。
大神「くっ…!!くそっ…くそっ!!!」
『フフフ……。ナァ大神一郎…。…真宮寺サクラニ…逢イタイカ…?』
大神「…なんだとっ!?」
『…逢イタイカ…逢イタイダロウ…?貴様ノ最愛ノ人ダモンナァ…?』
大神「…何が言いたい!?」
『……逢ワセテヤルヨッ!!最愛ノ者ノ…記憶ヲ無クシ、変ワリ果テタ姿ニナッ!!!』
すると突然、物凄い勢いで大神の身体が桜樹の方へと吸い寄せられる。
七瀬「…はっ!…いけない……あのまま…大神さんを……行かせては……」
大神「ぐっ…!…力が……入らない……!!」
『…貴様モ桜ノ生ケ贄トナレッ!!!』
大神「ぐぁぁあぁぁぁ!!!」
そして大神は桜樹に吸い込まれていく。
アイリス「お兄ちゃんっ!!」
エリカ「大神さんっ!!」
大神「…エリカくんっ!アイリスっ!…俺は絶対にさくらくんを連れて戻って来る!!…七瀬くんを頼んだぞ!!」
大神の姿は消えた。
七瀬「そ…んな…。もう……ダメよ……」
七瀬の顔がどんどん曇っていく。
エリカ「……大丈夫です。大神さんは、『絶対に戻って来る』って言いました。…大神さんは、絶対に嘘はつきません…」
七瀬「でも……」
アイリス「…お兄ちゃんはね、お風呂は覗くけど…約束を破った事は一度もないんだよ♪…アイリスも信じてる」
七瀬「……そうですか…。……大神さんは……幸せ者ですね」
俯いていた顔を上げ、優しく眼を細めた。
次回
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