『サクラ大戦~夢の通い路~』1:序幕「桜の見る夢」

サクラ大戦~夢の通い路~
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『サクラ大戦~夢の通い路~』
 
 
乙女達は夢を見た。
 
忘れえぬ夢、消せない記憶。
 
交錯する現実世界と夢世界。
 
混沌の闇を光が制する時、乙女の想いは繋がる。
 
桜の見る夢が、今始まった…。
 
 
 
 
 
さくら「…ここは…」
 
 
 
桜色の着物を装い、荒廃した土地に少女は1人佇む。
瓦礫から除くベンチや大時計から、元は公園であったであろうことが窺える。
 
さくら「…こんな場所に桜の樹?」
 
そこには、まるで荒廃した歴史をじっと見守っているかのように、
白桃色の花びらが満遍なく広がる一本の桜の樹が立っていた。
 
さくら「すごく綺麗だけど…なんだか悲しい。…桜が寂しそう…」
 
ふぅっと溜め息をつき、もう一度周囲を見渡す。
 
さくら「それにしても、皆どこに行っちゃったんだろう…。…もう!大神さーん!どこにいるんですかー!ねぇ大神さーんっ!!」
 
 
『…ミ……ツケ…タ…。……ミツケタ…』
 
 
さくらが踵を返すと同時に、後方からモザイクがかった声が聞こえた。
 
少しずつ少しずつ、自分の脳内へ語りかけるように近付いてくる…そんな感覚に襲われる。
 
さくら「…っ!?誰っ!?」
 
さくらは腰に据えていた聖剣、『霊剣荒鷹』を抜刀した。
 
さくら「隠れていないで、姿を現しなさい!」
 
 
『……生ケ贄ト…ナレ…。…桜ノ…生ケ贄ニッ……!!』
 
 
さくら「さくらノって…。私がさくらです!真宮寺・さ・く・らっ!!…何なんですかいきな……」
 
さくらが言い終える間もなく、辺り一面が真っ暗闇と化し、視界が奪われた。
 
必死に刀を構えるも、抵抗虚しく徐々に桜の樹へ吸い寄せられていく。
 
さくら「へっ!?きゃっ!そんなっ!!力が……入らない…っ!!」
 
 
『……オヤスミ……。』
 
 
さくらは文字通り、「桜の樹の中」に消えていった。
 
 
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さくら「…暗いなぁ…ここは何処なんだろう…。…みんなぁ……大神さん…。」
 
 
どこが端なのかも想像すらできない暗黒の中で、
戦友たちと想い人を胸に抱き、じっと座り込んでいる1人の乙女。
 
 
『-----』
 
 
さくら「…あれ…。何かが私の中から消えていく…。なんだろ…。」
 
 
-戦友たちと想い人を胸に抱き-
 
 
『「さくら、コレ食うか?美味いぞぉ~!」
「さくらさん、何度言ったらわかりますの!?」
「ほらほら、いい加減にしなさい。」
「わぁ~!!トーキョーの花組の方にまた会えるなんて…」』
 
 
さくら「…みんな…。………みんなって……誰…?」
 
 
『「どんどん行くでぇ~!」
「いくよっ、さくら♪」
「勝利のポーズ…」
「………参上っ!」』
 
 
-………たちと想い人を胸に抱きー
 
 
さくら「私の大切な大切な…。…帝国カゲキ……。…ダメ……なによこれ……」
 
 
恐怖や苛立ちで髪を掻き乱す。
しかし自分の五感は、それに応えてくれない。
 
 
『「正義は絶対に勝つ!」
「みんな…必ず帰還するんだ!」
「正義と平和を…二人の力で!桜花絢爛!」』
 
 
さくら「…大神さん…大神さん大神さん大神さん……」
 
 
決して忘れえぬよう、何度も何度も反復するが、
自分の言葉に、徐々に自信が持てなくなる。
 
 
さくら「思い…出せないよ…。助けてください……オオガミサン……」
 
 
-………たちと…………を胸に抱きー
 
 
『「…なんだかずいぶんと楽しそうでしたね。」
「さっ、さくらくん!?いつからそこに…!?」
「いいな。恋人みたいで。」
「い…いたいよさくらくん……。」
「ふん!もう………さんなんて知りませんっ!!」』
 
 
さくら「…あれ……消えてく……何か…とても大切な事が……」
 
 
『「あ、あの……」
「え?」
「……少尉ですか?」』
 
 
さくら「……嫌……嫌だ…やめて……忘れたくない……。」
 
 
『いつも……ふたりで……』
 
 
そして1人の乙女は
 
 
さくら「……いやぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!」
 
 
 
無に帰る。
 
 
 
 

次回

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