カンナ「……さてとっ!!じゃあどうすっか、これから……」
場の空気を変えようと、少し声を張り上げた。
マリア「…そうね…。…じゃあ、ホテルに戻って桜餅でも頂こうかしら?」
アイリス「…そうだねっ♪アイリスお腹減っちゃったし…ご馳走してよ七瀬っ!!」
七瀬「…皆さん…ありがとうございます…。…でも……それはできません…。…すみません」
七瀬は深々と頭を下げた。
エリカ「ほらぁ~!!お二人が七瀬さんの大切な桜餅を食べたいとか言うから……」
七瀬「ちっ、違うんです!!……その……。」
すると突然、今度は七瀬を除く全員の身体が桜色に輝き始めた。
グリシーヌ「なっ、何事だっ…!?」
七瀬「…『夢桜』へと呼び出した目的が達成された今……皆さんは元の世界へと戻ります…」
大神「なんだってっ!?」
アイリス「…そんな……やだよっ!!せっかく七瀬と仲良くなれたのにっ!!!」
七瀬「…ごめんなさい……もっと早く言わなければいけなかったのですが………私には…言えませんでした…」
ロベリア「……気にすんなよ…。…アタシは結構楽しかったしさ…」
七瀬「…ロベリアさん…」
さくら「あたしは七瀬さんとほとんど一緒にいませんでしたけど…。…あたしは貴女に救われました。ありがとうございましたっ!」
七瀬「…そんな……お礼を言うのは、私の方です…」
グリシーヌ「…此処での出来事……私は生涯忘れぬぞ…!!」
七瀬「……ダメなんです…」
グリシーヌ「…なに…?」
七瀬「…皆さんが元の世界へ戻ったら…この『夢桜』で起こった出来事は、全て忘れてしまうんです……皆さんも…私も…。…この世界でも…皆さんの世界でも……達成した出来事のみが残り、あとは全て無かった事になるのです…。それは…『夢』のように…」
カンナ「……そんなの……そんなの有りかよっ!!」
七瀬「…全部…『夢』だったんですよ…。…長い長い夢……」
大神「…俺は忘れない…」
七瀬「えっ…?」
大神「『夢桜』で感じた気持ち…繋いだ想い…。俺には全てがかけがえのない出来事だった!たとえ夢だったとしても…俺は決して忘れないっ!!!」
七瀬「…大神さん…」
マリア「…そうよ…。さっき、あやめさんに言われたばかりだもの。『想いを一つにした事を…忘れないで』ってね…」
カンナ「その通りっ!!あたい、その日に見た夢を覚えてる事、よくあるんだぜっ!!」
七瀬「…………」
七瀬は顔を上げていられなかった。泣き顔を見られたくなかったから…。
ロベリア「…アタシは、ちょっとばかし記憶力に長けてるんでね…。……忘れないよ……絶対に…」
グリシーヌ「…忘れられるはずがなかろう…。私はこの世界の在り方を、しかとこの目に焼き付けた」
七瀬はただただ頷いている。
エリカ「…わたしは…本物の桜の精さんに逢えて…大感激でしたっ!!……一緒に桜餅を食べた事……ぐすっ……絶対に忘れませんっ!!」
アイリス「アイリスだって忘れないよっ!!絶対にまた遊ぼうねっ!!また一緒に花札しようねっ!!!」
七瀬「……うんっ!!……やっぱり……ダメだぁ……。…涙…出ちゃう…。…もう泣かないって決めたのに……」
大神「…泣きたい時は…泣いてもいいんだよ…」
大神を含め、皆が声を震わせていた。
七瀬「…でも……。……『笑った方が可愛い』って…言われて…すごく……嬉しくて……」
七瀬を除く全員の足元から、徐々に光が放たれる。
大神「…俺達は…絶対にこの世界を忘れないっ!!信じてくれ!!…信じれば……」
七瀬「…はいっ!!………夢のように…全てが無くなってしまうかもしれないけれど……」
七瀬は満面の笑みを浮かべた。
七瀬「…それでも、私も皆さんの事を忘れませんっ!!」
大神「…あぁっ!!」
七瀬「…桜の季節に……必ず…必ずまた皆さんに逢いに行きますっ!!…私は…桜の精ですからっ♪」
アイリス「…またねっ♪」
七瀬「…私…皆さんの事を信じていますっ!!…信じれば……」
エリカ「待ってます!!わたし達ずっとずっと……待ってますっ!!!」
『-----』
そして皆の姿は消えた。
七瀬「…信じれば……」
…想いは繋がるから…
次回
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