-日本・帝都-
チュンチュンチュン…
大神「……んん……朝か……」
ベッドから起き上がり、大きく伸びをした。
大神「もう桜の季節か…。…今年も綺麗だな…」
窓から外を覗き込み、季春の風に暖かさを感じていた。
コンコンコン
さくら「…大神さんっ♪朝ごはんですよ♪」
大神「あぁっ!今行くよっ!!……桜…か……。……気のせいかな」
なにかが大神の脳裏を過ぎった。
しかし考えてもらちがあかないので、着替えて髪をセットすると、大神は足早に部屋を後にした。
-食堂-
さくら「おはようございます大神さん♪」
大神「おはようさくらくん」
アイリス「おはよ、お兄ちゃん♪」
大神「あぁ、おはようアイリス」
エリカ「おはようございます大神さん♪」
大神「おはようエリ………って!!なんで君達がここにいるんだっ!?」
グリシーヌ「何寝ぼけた事を言っておるのだ。久しぶりの再会だというのに……まったく…」
花火「ふふっ…大神さんったら………ぽっ…」
大神「(そ、そうだった…。昨日から巴里の皆が遊びに来てたんだっけ…)」
すみれ「どうでも良いですけど、早くお座りになってくださらない?」
大神「あぁ…ごめんごめ……ってわぁっ!!すみれくんまで…」
すみれ「まっ…『まで』とは失礼ですわね…」
カンナ「もぅいいから早く食べようぜ!!せっかくの料理が冷めちまうよっ!!」
大神「そ、そうだね……疲れてるのかな…おれ…」
「「いただきま~す!!」」
大神「(……桜か……。なにか…忘れているような……)」
ロベリア「どうしたんだ隊長?アンタが考え事なんて…珍しい事もあるもんだね」
大神「いや…。………」
ガタッ!!
大神はその場で立ち上がる。
大神「みんな…食事が終わったら『お花見』をしないか??」
さくら「わぁ♪いいですねっ!!やりましょうよっ!!」
コクリコ「やったぁ!!桜だ桜だぁ~♪」
マリア「フフッ…今の時期が1番綺麗でしょうね…」
織姫「『お花見』とは、ピクニックですかハイキングですかバイキングでーすかっ!?」
レニ「織姫…全部違うし最後のおかしい…」
紅蘭「ウチも全然構いまへんけど…どこに行くんや??」
大神「…そうだなぁ……」
-上野公園-
エリカ「わぁーーーっ♪ほんっっ………ケホッ………っっっとに綺麗ですねぇ!!!この世にこんな綺麗なものがあったなんて…エリカ大感激でーすっ!!………むぎゅっ」
ロベリア「あぁもうっ!うっとーしいな…!!…抱き着くなよいちいちっ!!!」
大神「でも本当に綺麗だ…。特にあの真ん中にある1番大きな桜の樹……」
さくら「はい…。なんだか伸び伸びと…幸せそうに咲いていますね♪」
ドキッ♪
大神「あっ…あ、あぁ……」
大神は、『さくら』に「『桜』がとても良く似合う…」…と言いたかったのだが、照れ臭くてやはり言えなかった。
すみれ「ちょっと中尉!!はやく何かおつまみでも買って来て下さいな!!」
大神「おつまみって…真昼間からお酒を飲むのかいっ!?」
すみれ「当たり前でしょう!!…『お花見』には『お酒』と、むかぁ~しから決まっているのですわっ!!」
織姫「おぉ!!『花よりタンゴ』ってやつでーすね♪」
レニ「織姫…それも違う…」
大神「わかった…行ってくるよ…」
さくら「あっ、あたしも行きますっ!!」
大神とさくらは『おつまみ』を買うために園内を歩き回っている。
大神「はぁ…。これだけ出店が多いのに、なかなか見つからないもんだねぇ…」
さくら「……見つからなくていいです……」
大神「えっ…?」
言葉と同時に、さくらは俯き赤面しながらも、そっと大神の手を握った。
大神「さくらくん…」
さくら「…まだ…見つからなくていいです…」
握る手に少し力を込める。
大神「あぁ…そうだね…」
そして大神もそれに応えた。
さくら「…大神さん…」
顔を伏せ続ける。
さくら「いつも…二人で……これからもずっと一緒に……いてくれますか…?」
大神「……もちろんだよ…君は俺が守る。…ずっと一緒にいよう」
さくらは大神の肩に寄り添った。
『-----』
さくら「…今あたし……とても幸せです……。」
大神「あぁ…俺も………」
「はぁーーい♪そこの幸せそぉ~なカップルさん!!お酒のおつまみに『桜餅』はいかがですかぁ~♪」
大神が言いきる前に、張り上げた女性の声が割り込んできた。
大神「なっ、なんだ…!?」
さくら「なんか…『桜餅』どうですか……って…」
『「…はふぅ~…おいしい…」』
大神「…桜餅……」
さくら「…これにしましょうか!買いますっ♪」
「ありがとうございまぁ~す♪1パック6個入り、50銭です♪」
さくら「じゃあ…3パック下さい♪」
「はいは~い♪では、1円と50銭になります」
さくら「1円50銭ですね。え~と…」
「………。……私…この場所には、とっても大切な想い出があるんです…。やっと…思い出せたんですけど…」
女性はそっと俯いた。
さくら「…想い出…ですか…?」
『「……夢のように…全てを忘れてしまうかもしれないけれど……」』
「だからこの時期には、これから毎年、ここに来ようかなぁって思って…」
大神「(…何だ…?……なにか大切な事が……)」
『「…それでも、私も皆さんの事を忘れませんっ!!」』
「……やっと…桜の季節になりましたね…。…私…大好きなんです……桜が……」
『「…桜の季節に……必ず…必ずまた皆さんに逢いに行きますっ!!」』
大神「…………」
「…あっ……ご、ごめんなさい!!私、一人で変な事ばっかり言って…。……今のは…忘れちゃってください……。……おつりおつりっと……」
大神「……桜……」
『「…私は…桜の精ですからっ♪」』
大神「………っ!!!」
……想いは繋がった……
大神「……七瀬くん……」
「………っ!!!!」
さくら「……あっ……!!」
その女性の頬を、一筋の涙が伝う…。
大神「…皆、きっと七瀬くんの事を待っている…。……行こうっ!!!」
七瀬「……はいっ!!」
七瀬は満面の笑みを浮かべた。
それは涙に溢れていたが、今までで1番可愛い笑顔であった。
…人は皆、夢を見る。
夢の中で男女が逢う道、即ち夢路。
…すぐに消えてしまう…はかない夢……。
…しかし皆は忘れない…。
信じ続ける限り…想いは繋がるから……。
……桜の見る夢は……
……終わらない……。
『サクラ大戦~夢の通い路~』-完-
一話まとめ
・サクラ大戦~alleluia~
・サクラ大戦~夢の通い路~
・サッカー大戦~蹴れ!高速の蹴球華撃団!~
・『サクラ大戦〜短編集〜』:『温泉パニック』
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