-事務所-
事務所内に軽快なBGMが響き渡る。
~チャッチャララッ♪タッター♪~
『自然戦士ナチュレンジャーーー!!』
ナレ「第48話 靴の行方は深海に」
~デデン♪~
怪人サメハダー「おい小僧!!はやくその『海神の靴』をよこせ!さもなければ妹の命はないぞ?」」
悪の秘密結社・彗族幹(すいぞくかん)の幹部である怪人サメハダーは、少女の首を抑えつけ、じりじりと少年に詰め寄っていく。
男の子「くそっ!卑怯な…。じいちゃんの形見であるこの『海神の靴』をあいつに渡してしまったら、地上が海に飲み込まれてしまう…そうなったらもう、地球は終わりだ…」
迷っている少年に、捕らわれた少女は必死に声をかける。
女の子「お兄ちゃん!わたしのことは気にしないで!!その靴だけは渡してはダメ!!」
怪人サメハダー「えぇいうるさい小娘!!それ以上騒ぐと…こうだ!!」
サメハダーは抑えつけている腕をぎゅうぎゅうと絞っていく。
女の子「きゃああああああああ!!!」
男の子「やめろ!!!!…わかった!渡す…渡すから妹を放せ!!」
少年は握りしめていた『海神の靴』を目の前に放り投げた。
怪人サメハダー「フッ、それでいい。確かに『海神の靴』はいただいた。では約束通り…二人とも死ねぇ!!!」
抑えつけていた少女を突き飛ばすと同時に、尾ビレに忍ばせていた戦斧へ手を掛ける。
男の子「なんだとっ!?約束が違うじゃないか!?!?!?」
怪人サメハダー「フハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」
サメハダーは戦斧を天高く振り翳す。
男の子「…もうだめだ……誰か…誰か助けて!!!!」
「「「「「そこまでだ!!!」」」」」
怪人サメハダー「だっ、だれだ?!」
デデーーーーン
赤「大海の戦士!マグロレッド!!」
青「瀬流の戦士!カイソウブルー!!」
黄「陸地の戦士!ガンセキイエロー!!」
桃「樹齢の戦士!カジツピンク」
白「湖沼の戦士!ハクチョウホワイト!!」
「「「「「自然戦隊 ナチュレンジャー!!!」」」」」
ドガーーーーーン!!!
マグロレッド「5秒で自然に還してやるぜ!」
怪人サメハダー「なななっ、なんだ貴様らはっ!!これでもくらえ!キャビアロケット!!!」
突然の登場に動揺を隠せないサメハダーは、戦斧の先端から弾丸を発射する。
5人「「「「「「5……4……3……2……1………くらえ!シーチキンショット!!!」」」」」
しかし放たれた5つの光は、それを覆い隠すように飲み込み、そのままサメハダーを貫いた。
怪人サメハダー「おおおおお・・・・・・ぐわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁあ!!!!!」
バァーーーーーーン
マグロレッド「一丁上がり!」
マグロレッドは地に落ちた『海人の靴』を手に取り、少年に手渡した。
男の子「あ、あの…!」
マグロレッド「よく頑張ったな少年!しっかり刺身を食べて、もっと強くなるんだぞ!!またな!!」
言い放った戦士たちは、彼方へ消えていった。
男の子・女の子「あっ…ありがとう!!!ナチュレンジャーーーーーー!!!」
♪テッテレー♪(EDテーマ)
♪つよいぞあったかいぞナチュレンジャー♪
♪いけいけ今日もお寿司屋さん♪
♪戦えぼくらの♪
♪自然戦士ナチュレンジャー♪
-おしまい-
プツン
TVの電源が静かに落ちる。
そしてリモコンを握りしめた彼女は、その場ですくっと立ち上がった。
未央「……か…………」
凛「?どうしたの、未央?」
未央「かっこいいいいいいいい!!!」
卯月「なっ、なんですか急にっ?!」
制服を着た少女は、椅子から転げ落ちそうになりながら声を掛けた。
未央「なんですかじゃないよしまむー!これ、いまチビっ子たちに大人気の『自然戦隊ナチュレンジャー』だよ!!もうカッコよくてカッコよくて……」
凛「未央、そういうの好きだったっけ…?意外だね…」
未央「いやなんていうかさぁ…普段は冴えない魚屋さんなのに、ここぞっ!っていう時に変身して子供達を守るのよ…。なんだか、私たちに似てるなぁって!」
未央は、よっと変身ポーズの真似をとる。
卯月「そうですね。確かに私たちも普段は普通の女子高生…、でもステージではシンデレラですもんねっ!そう思うと、私アイドルなんだなぁって改めて実感します…」
未央は卯月の言葉を最後まで聞かず、窓へと近寄った。
外は雲ひとつない晴天。
そんな空から街を見下ろしながら、未央はポツリと呟き始めた。
未央「………たい」
凛「え?」
未央「なりたい!」
凛「えっ?な、何に?!」
未央「なりたいなりたいなりたーーーい!ナチュレンジャーになってみたーーーーい!!」
凛「え、ええええぇえええ?!そっち?!」
未央「だってさ!可愛いアイドルもいいけど、一度はチビっ子達を守るカッコイイヒーローになってみたいんだもん!!」
凛「ヒロインじゃないんだ……いや、そこが問題じゃないんだけどさ……」
未央「ねぇねぇしまむー!しまむーならわかってくれるでしょ?ね?ね?」
卯月「はいっ!実は私も、一度はやってみたいと思ってました!!」
凛「え、えぇえぇええっ?!」
未央「よし決まり!ニュージェネレーションズ、チビっ子たちを守るヒーローになります!!」
凛「ちょちょ、ちょっと待っ……」
実にテンポ良く、話は進んでいく。
卯月「そうと決まれば、プロデューサーさんに相談ですねっ!」
凛「え、ええええええぇぇええぇええぇぇ?!?!?!」
未央「その通ぉーーり!ってことで、しまむー!しぶりん!一緒にプロデューサーのところに行こう!ねっ!」
凛「かっ、勝手に決めないでよ!!私はまだ……」
この流れを止めようと、凛は身を乗り出して割り込む。
未央「…きっとさぁ…ハナコが悪い怪人をやっつける姿って、それはもう、すんごぉーーーーく可愛いんだろぅなぁ……」
ぴくっ
未央「そんでもってさぁ、倒した後に決めポーズなんかとっちゃったら、もう二度とない絶好のシャッターチャンスになるだろうねぇ…」
ぴくっぴくっ
未央「まぁでも、しぶりんがどうしても嫌だって言うなら、仕方ないけど諦めるか。ハナコの勇姿が観れなくなるのは残念だけど……」
てくてく…
あたかも独り言のように呟きながら、未央はドアへと向かっていく。
凛「……みっ、未央!!」
(かかった!!)
未央「ん?なぁに??」
不敵な笑いを堪えながら振り向いた。
凛「わ、わたしも……なろう…かな…ナチュレンジャーに…」
未央「ホントっ!?!?きっとしぶりんもそう言ってくれるって信じてたよぉ〜!!では早速、プロデューサーのところにレッツラゴー!!」
まるでこの展開が全て計算であったかのように、素早く凛の手を握り、扉へ向かいだした。
凛「えっ、ちょ、ちょっと未央!!」
卯月「わたしも行きますーー!!」
凛は馬車の如く手を引く未央に連れ出され、卯月も軽快な足でその後を追っていった。
次回
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